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【研究発表・講演】第22回毛髪科学研究会 サラヴィオM-1開発チーム発表

別府温泉に「育毛・発毛」の促進効果毛乳頭細胞の一次繊毛の機能と加水分解酵母エキスによる制御

11月29日、第22回毛髪科学研究会(東京都千代田区大手町)
にて、別府温泉由来の「加水分解酵母エキス」に育毛・発毛を促す効果があることを発表しました。

「加水分解酵母エキス」を添加すると、毛乳頭細胞(発毛を促す指令を出す細胞)に以下の変化が起こります。

  • (1) 毛乳頭細胞の一次繊毛(発毛のシグナルを制御するマイクロセンサー)が55%長くなる。
  • (2) 毛乳頭細胞内のATP(発毛エネルギー)量が40%増加し、毛乳頭細胞が活性化する。
  • (3) 活性化した毛乳頭細胞は毛母細胞(髪の毛を作り出す細胞)や線維芽細胞(髪の土台となる)を活性化するさまざまなシグナル因子を作り出す。
  • (4) FGF-10(毛母細胞や線維芽細胞の増殖を促進する発毛シグナル分子)の産生量は300%に増える。

研究成果の内容

毛乳頭細胞は発毛シグナルの司令塔として盛んに研究されている細胞です。
今回の研究で毛乳頭細胞にある一次繊毛(シグナルのマイクロセンサーとして知られる)と発毛シグナルの関係を解明しました。 毛乳頭細胞の一次繊毛形成を制御する方法としては、細胞培養液にリチウムイオンを添加することで確立し、一次繊毛が通常の長さの細胞群(A群)と伸長した細胞群(B群)を作りました。
細胞から産生された発毛シグナルは細胞培養液に放出されることに着目し、A群およびB群から細胞培養液を回収しました。別に用意したケラチノサイト(毛母細胞のモデル)に、これらの細胞培養液を与えたところ、B群からの細胞培養液では細胞分裂が2倍以上盛んになることがわかりました。これにより、一次繊毛が発毛シグナルの伝達に関わっていることが証明されました。

(写真左)赤で着色した部分が一次繊毛。上は通常の状態。一次繊毛が伸びた細胞(下)では発毛シグナルの増産により毛母細胞の増殖が2倍以上促進された(グラフ)。

加水分解酵母エキスによる一次繊毛の伸長のほか、細胞内ATP量(左グラフ)、およびFGF-10の増加(右グラフ)が確認された。

さらに、別府温泉で発見した温泉酵母から抽出抽出したエキス(加水分解酵母エキス)が毛乳頭細胞の一次繊毛を伸長させることを発見しました。加水分解酵母エキスによる毛乳頭細胞の活性化・発毛シグナルについて検証しました。毛乳頭細胞は、加水分解酵母エキスの存在下で一次繊毛を伸長させ、細胞の増殖能、移動能、および細胞内ATP量を高めることが明らかになりました。さらに加水分解酵母エキスを与えた毛乳頭細胞において、発現している全遺伝子の網羅的解析を行ったところ、発毛・毛髪の成長に関与する様々なシグナル因子が活性化されていることがわかりました。特に、毛母細胞や線維芽細胞の増殖を促進するFGF-10の増加は300%に達することが判明しました。これによって、「加水分解酵母エキス」が毛乳頭細胞の一次繊毛のセンサー機能を高め、毛母細胞の増殖に関わるシグナル因子を増加させる作用機序が実証され、この機構を「マイクロセンサー理論」と名付けました。

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