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【論文掲載】フレグランスジャーナル(FRAGRANCE JOURNAL)2016年5月号

論文タイトル「温泉藻類RG92の健康と美容への効果」

「おおいた温泉座®」におけるアンケート調査を元に発表した論文『温泉藻類RG92の健康と美容への効果』が、日本を代表する科学専門誌である「フレグランスジャーナル」に掲載されました。

温泉藻類®RG92の効果に関しては、日本薬学会第135年会での学術発表や中国で開催された世界分子細胞生物学会での招待講演にて、研究機関へ向けた発表を重ねてきましたが、今回は、直営店第1号の「おおいた温泉座」にてRG92を実際に使っていただいた方達から声を集約させていただき、より消費者の視点とリアリティにこだわった論文として発表いたしました。

温泉効果の源の一つである温泉の“藻” RG92 は、予防薬・治療薬開発の特許を取得した原料ということで敷居が高いイメージがありますが、温泉効果を毎日気軽に、そして楽しみながらスキンケア・ヘアケア・ヘルスケアにお役立ていただけるよう開発した製品が、あるじの秘湯泉やBEAUTE(ボーテ)を始めとするオリジナル製品です。
たくさんの方にRG92の効果をお役立ていただきたいと考えております。

論文掲載内容

1. はじめに

温泉の効果効能

日本の観光実態調査(2014年)によると、国内旅行の目的の第1位は温泉である1)。バブル崩壊から今日まで不況が続く中でも公衆温泉浴場の数が7,883施設に倍増していることは注目に値する2)。
海外からの観光客にとっても温泉の人気は高く、政府も温泉を活かした訪日客倍増計画など精力的に取り組んでいる3, 4)。今後ますます世界に温泉文化が広がるであろう。

「湯治」や「温泉療養」で知られるように、多くの温泉は疲労回復をはじめ、冷え性、筋肉痛、関節痛、神経痛、リウマチ、アトピー性皮膚炎などの健康と美容に関わる症状を緩和することが知られている。

最近では、生活習慣病の予防にも関与していることが示唆されている。
九州大学病院別府病院の前田は大分県別府市で大規模な調査を行い、継続的な温泉利用が虚血性心疾患や脳卒中の発症率を低下させることを報告した5)。
一方で、温泉の効果効能に関する有効成分や作用メカニズムの研究は未だ道半ばである。

消費者の声

手軽でリーズナブルに温泉気分を楽しむことができる入浴剤・浴用化粧品の人気は高い。厚生労働省の発表によると、入浴剤の国内生産額は4年連続で増加しており、平成26年には421億円に達している6)。温泉文化の普及や観光業界の活性化を受けて、入浴剤のニーズは今後ますます高まっていくことが予想される。

東京浅草の新商業施設まるごとにっぽんの館内にある「おおいた温泉座」で、入浴剤などの温泉商品についてのアンケート調査を行った(図1)。
その結果、消費者が商品に最も期待する項目は圧倒的多数で「効果・効能」であった。

その内訳として、
 ①疲労回復・リラクゼーションを筆頭に、肩こり、腰痛、関節痛、リウマチなどの痛みの緩和
 ②肌荒れの改善、保湿、アンチエイジング等の美容効果
 ③アトピー、赤み、かゆみ等の皮膚疾患の改善
が挙げられた。

温泉地の代表として大分県別府市で行ったアンケート調査においても、ほぼ同様の結果が得られた。
本調査により消費者は健康や美容に関する多くの悩みを持ち、効果を実感できる商品を強く望んでいることが明らかとなった。また、商品の安全性に対する意識が高いことも重要なメッセージである。

図1 温泉商品に関するアンケート調査
(A)おおいた温泉座(東京浅草、まるごとにっぽん館内)
(B)アンケート調査結果「温泉商品に期待するもの」(20~70代の男女122人)
(C)期待する効果・効能の内訳

温泉藻類RG92

湯けむりで覆われる大分県別府市は、源泉数、療養泉の泉質の種類、また、入浴型温泉における湧出量においても世界一を誇っている(図2A)7, 8)。弊社は、江戸時代後期に別府を治めていた森藩が作った湯治場(温泉保養地)の跡地にある(図2B)

(A)源泉数世界一を誇る別府温泉街  弊社本部および研究所は湯けむりの向こう側にある
(B)照湯惣図
伊島重枝・江川吉貞『鶴見七湯廼記』弘化二年(1845)
【大分県立歴史博物館所蔵】より一部改変して引用

私たちはこの地を中心に別府温泉各地から温泉資源を採取し、研究を進めている。
温泉水や鉱泥にはミネラルや有機物の他に、多種多様な微生物の存在が確認される9)。メディカルツーリズムで有名なイタリア・アバノ市の温泉泥(ファンゴ)からは、ある種のラン藻が単離されており、その成分にはファンゴの薬理効果の一部を担う可能性が示唆されている10)。

私たちは別府温泉に生息する微生物に着目し、200種類以上の温泉微生物を単離し、解析を行ってきた。
それらの中で、最も安全性と有効性に秀でた新種の藻類を温泉藻類RG92と名付けた(特許第5676702号「藻類体から抽出したエキスを含有する組成物、及び化粧用組成物、炎症性疾患の治療・予防薬、並びに新規微生物」、エコサート原料登録認定)。

(C)別府温泉各地で発見された温泉藻類

2. 温泉藻類RG92 ~健康と美容を促進する多機能性原料~

痛み軽減

肩こり、腰痛、関節痛などの痛みや疲労には種々の炎症因子が関与している。主要な発痛増強物質であるプロスタグランジンE2(PGE2)は、炎症刺激によりシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)やPGE合成酵素(PTGES)等の働きで合成される11)。PGE2はPGEレセプター3(PTGER3)等の受容体を介して痛みを増強する。

真皮由来線維芽細胞(真皮細胞)をインターロイキン‐1β(IL-1β)で刺激すると、COX-2の遺伝子が過剰発現されるが、温泉藻類RG92エキスはその過剰発現を抑制した(表1)。
また、COX-2酵素活性を濃度依存的に阻害し、50%阻害濃度(IC50値)は27.7 μg/mLであった。
さらに、痛みに関与する神経成長因子(NGF)、TRPA1(Transient receptor potential cation channel subfamily A member 1)、PTGES、PTGER3の遺伝子発現も抑制した(図3B, C, 表1)。

関節リウマチは、関節滑膜に炎症が生じることによって関節が破壊される疾患である。
温泉藻類RG92エキスは、炎症刺激した滑膜細胞(関節滑膜の線維芽細胞)が産生する炎症性サイトカイン(IL-1β, IL-6, 腫瘍壊死因子-α(TNF-α))やコラーゲンを分解するマトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)の遺伝子発現を抑制した(表1)。

これらの結果を踏まえ、関節痛等の痛みに悩む方を対象に温泉藻類RG92エキス配合ローションの効果を検証した。その結果、81人中70人で痛みが改善され、改善指数が著しく高い事例もみられた(図3D)。
したがって、温泉藻類RG92は、関節、筋肉、神経等の炎症による痛みの緩和に有効であることが期待される。

表1 温泉藻類RG92エキスで発現が変動した遺伝子群

<発現低下が確認された遺伝子>
痛み・かゆみ
炎症
<発現増加が確認された遺伝子>
抗炎症
その他
アンチエイジング

図3 温泉藻類RG92エキスの痛み軽減作用

(A)COX-2活性阻害
(B)IL-1βで刺激された軟骨細胞のNGFの発現抑制
(C)真皮細胞のTRPA1の発現抑制
(D)温泉藻類RG92配合ローションの効果
痛みが無い状態を0、痛みの最大値を10として評価した。
使用前から使用後の痛み指数を差し引いた値を痛み改善指数とした

肌の悩み改善

皮膚の炎症は、TNF-αやIL-1といった炎症性サイトカインやアクネ菌、その他の刺激物質により誘発され、赤みやかゆみ、にきびなどのスキントラブルを引き起こす。
また、炎症刺激により皮膚細胞からMMPsが分泌され、コラーゲンを分解して肌のたるみやシワを引き起こすなど、皮膚の老化とも密接に関連している12)。

IL-1βで刺激した真皮由来線維芽細胞株(真皮細胞株)に対し、温泉藻類RG92エキスはTNF-αやMMP-9の遺伝子発現を著しく抑制した(図4A, B)。
また、にきびの原因となるアクネ菌の懸濁液で表皮ケラチノサイト(表皮細胞)を刺激した場合にも、本エキスによってにきびの炎症に関わる物質(IL-1β, IL-8)の過剰発現が抑えられた(図4C, D)。

モニター調査では温泉藻類RG92配合ローションを1週間使用することにより、肌荒れ、乾燥肌、にきび等のスキントラブルが、42人中38人で何らかの形で改善された。同様に、かゆみ指数(図4E)や紅斑指数(図4F)の減少も認められた。
以上より、温泉藻類RG92には炎症によるスキントラブルの改善や予防効果も期待される。

(A, B)IL-1βで刺激した真皮細胞株におけるTNF-αとMMP-9の遺伝子発現抑制 **, p<0.005 vs IL-1β(n=3)
(C, D)アクネ菌懸濁液で刺激した表皮細胞におけるIL-1βとIL-8の発現抑制
(E)温泉藻類RG92配合ローションの効果
かゆみが無い状態を0、かゆみの最大値を10として評価した。*, p<0.05

(F)紅斑指数

アンチエイジング

活性酸素種(ROS)や終末糖化産物(AGE)は加齢とともに体内に蓄積し、細胞に酸化や糖化のストレスを与えることで、皮膚の老化や生活習慣病の発症に関与している13, 14)。ROSおよびAGEは日常的な生命活動において産生され、喫煙や紫外線によって著しく増加する。
また、エタノール等の化学物質は皮膚細胞の老化やダメージを引き起こし、皮膚の老化を早めることが示唆されている15, 16)。
一方、長寿遺伝子として知られているサーチュイン1(SIRT1)は、エネルギー産生工場であるミトコンドリアの量を増加させることや17)、カタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)などのROS除去因子を誘導することが知られている18)。
このような各老化促進因子による細胞ダメージおよびアンチエイジング因子に対する温泉藻類RG92エキスの効果を検討した。

ROSの一種である過酸化水素(H2O2)で表皮細胞に酸化ストレスを与えると、その増殖が著しく抑えられたが、温泉藻類RG92エキスはこの増殖抑制を緩和した(図5A)。
同様に、AGE-BSA(AGE化ウシ血清アルブミン)の糖化ストレスにより真皮細胞株の増殖は抑制されたが、本エキスはその増殖抑制作用を緩和した(図5B)。
エタノールによる表皮細胞の増殖障害作用についても阻害効果が認められた(図5C)。
さらに、温泉藻類RG92エキスは、アンチエイジングに関するSIRT1とGPX2の遺伝子発現を増強することがわかった(図5D、表1)。
本エキスは、炎症刺激で誘発するROSの増加を抑制することも判明した(滑膜細胞、Data not shown)。

これらの結果から、温泉藻類RG92は酸化や糖化、エタノール等の刺激物による細胞ダメージを軽減するだけではなく、アンチエイジング効果も持ち合わせることが示唆された。

図5 温泉藻類RG92エキスのアンチエイジング作用
(A)H2O2で刺激した表皮細胞の増殖率への影響 *, p<0.01 vs H2O2(n=3)
(B)AGE-BSAで処理した真皮細胞株の増殖率への影響 **, p<0.005 vs AGE-BSA(n=4)
(C)エタノール(EtOH)で刺激した表皮細胞の増殖率への影響 **, p<0.005 vs EtOH(n=3)
D)真皮細胞における長寿遺伝子SIRT1の発現促進

3. 温泉藻類RG92の安全性

近年、ストレスや食生活の乱れ、睡眠不足等により敏感肌に悩む方が増加している19)。
敏感肌で悩む方が化粧品に最も求めるものは「安全性」であり19)、おおいた温泉座におけるアンケート調査でも上位にきている。
温泉藻類RG92エキスの安全性を評価するために、細胞毒性試験、光毒性試験、突然変異復帰試験、パッチテストを行ったところ、全てにおいて陰性であった(Data not shown)。
安全性の高い原料であることを確認し、エコサート原料にも登録された。

4. おわりに

別府温泉で発見した温泉藻類RG92には、痛み・かゆみの軽減や炎症の抑制、さらにアンチエイジング作用があることが示唆された。
抗炎症作用により、炎症に起因する円形性や老人性の脱毛症にも効果がある可能性が示された。
「炎症」「酸化」「糖化」は細胞ダメージを誘導し、痛みやかゆみなどの苦痛や、肌荒れ、シワ・シミ、脱毛症などの老化や各種疾患を引き起こす。温泉藻類RG92は、これらの細胞ダメージを抑制すると同時に、長寿遺伝子を増強することで「健康」「美肌」「美髪」に貢献できる新規原料である(図6)。

図6 温泉藻類RG92による健康と美容の促進効果

実際に、モニター調査により温泉藻類RG92エキスは、関節や筋肉の痛み、肌や頭皮環境の改善に有効な原料であることが確認された。
現在、温泉と同様もしくはそれ以上の効果が期待できる温泉藻類RG92を配合した入浴料などの商品の開発を進めている(図7)。

図7 入浴剤・ヘルスケア商品「あるじの秘湯泉」と温泉藻類RG92エキス配合の入浴料(開発中)

約27億年前に誕生した藻類の先祖は地上に酸素をもたらした。その結果、生命は海から陸へ進出し、ヒトへの進化につながった。
地球史・人類史を作り上げることに貢献した藻類が、健康と美容の促進を通じて、健康寿命の延長や生活習慣病の改善などをはじめとするQOLの向上に役立つことを確信している。
最近、炎症を抑えることで健康寿命が延びるという興味深い報告があった20)。抗炎症作用とアンチエイジング作用に秀でた温泉藻類RG92を最大限に活用し、社会に貢献したい。

こちらのPDFにて詳細をご確認いただけます

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